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アルマトイにて 5




「ズドューラストゥヴィツェ、ヤーニパニマーユ、ナビシーチェツェーヌ、スコーリカストーイットゥ・・・」

彼女はオレの書いた単語を指差しながら次々と発音していく。
その勢いはまるでトイレのロールペーパーが無目的に引っ張られているかのように乱雑に排出され、オレの収拾が追いつかないのもお構いなしに彼女は機械的にロシア語を発音していく。
まったくついていくことのできなかったオレはもう一度同じことをお願いしようとすると彼女はふてぶてしい態度でお手をしている。
10ティーンでチャンスは一度だけらしい。
なんてずるくて頭が良いんだ。
そうやって5日間ほど、その宿にてオレはロシア語合宿をすることになった。
彼女の名前はアリエフ。
何度も何度も質問を繰り返して自分のロシア語でようやく質問できるようになった頃に、彼女はようやく名前を教えてくれた。
その達成にはとても意味があるような気がした。
彼女の表情にアリエフという名前が宿ることによって、彼女の存在に色がかかったようにすら見えた。
彼女は相変わらず不機嫌な目つきをしてオレの前に立っているだけだ。
たぶん変わったのはオレの方なのだ。
態度はひどく悪いものではあったけど、この数日間のオレの質問にきちんと答え続けてくれたことに、オレはとても感謝していた。
何もかも有料だったけど、それでもオレの選んだことなのだ。
失ったお金など問題ではなかった。
最後にアリエフとはロシア語の実習も兼ねて街をいっしょに歩くことがあった。
良い機会なので街のレストランで彼女に食事をご馳走した。
アリエフはとてもおいしそうに羊肉と馬肉のカザフ料理をがっついていた。
そのとき彼女はオレにいくつかのカザフ語も教えてくれた。
あれは諺なのだろうか、「カザフ人は世界で2番目に肉を食べる。一番はオオカミだ」アリエフはそう言った。
また、アルマトイはカザフ語でリンゴの里という意味があるらしい。
なるほど、どうりでリンゴが美味しいわけだ。
そうやって居心地のよかったアルマトイの街を後にした。

5/5