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アルマトイにて 4




朝起きてまず確認しておかなければならないのはどっさりと手にしている紙幣の束だった。
カザフスタンの通貨価値は恐ろしく低く、物価がとてつもなくインフレなので、手にしている紙幣は膨大だった。
1万円ほどの両替で札束ができてしまうほどの紙幣を渡されたのを小分けにして、通貨の単位と価値を知る必要があった。
ロシア語の何たるかはこうして数字から学ぶことにした。
単位はテンゲ、だいたい1テンゲが0.6円といったところだった。1テンゲ、2テンゲが通貨で、あとはすべて紙幣、100テンゲで1ティーンだった。
日本と比べたら何もかもが安いから何でも言いなりになってどんぶり勘定でも面倒がなくて良いとは思うのだが、自ら進んで騙されるのを善とするのを認めるわけにはいかなかった。
何の知恵も使うつもりがないならこんな旅はするべきではないし、騙されるのを認めてしまえば、運が悪ければきっと命にも関わることなのだ。
昨日は多少疲れていたこともあって頭がすぐにショートしてしまっていた。
でも、今日は何かが違っていた。
ロシア語で知っていたのはダー、ニエット、ハラショー、スパシーバ、イクラだけだったのでそこから発音記号を探ろうと思ったのだが、何かが非効率だと思うと面倒になった。
やはり、発音に関しては聴くしかないのだと思った。
オレは必要だと思う言語を英単語からロシア語に変換して書き出したものを宿のフロントにいるカザフスタン女性を相手に教えてもらうことにした。
30代中盤といったところだろうか、金色の髪とタバコのよく似合う切れ長の目尻のきつい強そうなカザフの女性だった。
彫の深い白い顔でそういうオレを一見してスッゴイ嫌そうな顔をされた。
しょうがないからオレは1ティーン分の紙幣を差し出して、教えてくれと頼んでみる。
それでも彼女はありえないといった顔でまったく相手にしてくれなかった。
なんて女だ!と思いながらも、オレにとってこの勝負はこの旅の命運を握っているくらいの気持ちでいた。
それを安く値切ろうなどと少し甘かったのだ・・・とオレは10ティーン分の紙幣を差し出して女に頼み込んだ。

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